2020年4月16日に行われた王将戦一次予選で、後手番の高野秀行六段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
高野六段はC級1組在位のベテラン棋士。四間飛車の著書があるが、現在は完全な居飛車党。
対する先手は中村太地七段。王座の経験を持ち、テレビ出演も多い人気棋士。こちらも振り飛車の棋書が多数あるが、現在は居飛車党である。
本局は先手居飛車に対し、「最強右玉」という金銀4枚で固める戦型となった。
棋譜は、スマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」からどうぞ。
※以下、毎日新聞様の許諾を得て局面図を掲載しています。
公式戦で最強右玉が登場!
序盤は角換わりから後手が待機作。現在大流行中の展開である。
先手が▲4六角打で角を手放したのを見て、後手は金銀4枚で組む最強右玉と移行した。棋譜が公開されている公式戦で最強右玉が指されたのはこれが初めてかもしれない(もっと古い対局があればぜひご一報を!)。
最強右玉とはなにか? アマ強豪で将棋YouTuberであるかなきちさん命名の金銀4枚で堅める右玉である。
元々はかなきちさんの対局相手(恐らく棋神使い)が使ってきた戦法で、のちにかなきちさん自身も採用している優秀な作戦である。詳しくは以下のエントリを見てほしい。
新時代の右玉になるか? 鉄壁の金銀4枚右玉!(最強右玉)
今回は、将棋系YouTuberのかなきちさんの右玉動画が凄まじかったので紹介させていただきたい。 対局者は、先手がかなきちさん。将棋ウォーズ八段という超強豪だ。 後手は将棋ウォーズ九段で42連勝という猛者。棋神の有無はわからないが、将棋ウォ...
ポイントは先手が角換わりで▲4六角打と角を手放していること。後手は2筋、3筋を放棄して玉を固めることである。
本譜は65手目に▲2四歩とし、スカスカの2筋を攻めてきたが、これは右玉側の狙い通り。評価値は大きく後手に振れることになる。
△同歩、▲同角に、△2一飛! とするのが手筋。この手を知らないと最強右玉は指せない。
ちなみに▲同角に変えて▲同飛の場合は、△1三角打で後手有利となる。
高野六段の快勝譜となるはずが……
70手目5九角打は好手。2枚換えに持ち込むことになり、はっきり後手有利となった。その後、やや先手に流れが行くものの、先手の猛攻を凌いだに見えた後手が一時勝勢となったが、中村七段の粘りもすごかった。
117手目▲9七香からの▲9八玉は素晴らしい受け。以降、正確に指した中村七段が受けなしに追い込み、先手の逆転勝利となった。
勝利していれば高野六段の快勝譜となったであろう。
それでも最強右玉の優秀さは間違いなく、今後も公式戦で登場する可能性がある。もしくは、▲4六角打自体が減るかもしれない。
というわけで、右玉NOWは今後も高野秀行六段を応援します!