2020年8月31日に放映されたNHK杯2回戦第3局にて、後手番の青嶋未来六段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
青嶋未来六段は高い勝率を誇る若手棋士。棋風はオールラウンダーで、右玉党にとっては「現代右玉のすべて」の著者としてもお馴染み。
これから右玉を指すなら必読! 青嶋未来著「現代右玉のすべて」レビュー
今回は右玉の棋書から「現代右玉のすべて」を紹介したい。 現時点で最新の右玉本(2018年5月18日発売)であり、これから右玉を指したい人には最適な一冊となる。 著者は若手強豪の青嶋未来五段。プロ棋戦でも右玉を採用している。 (青嶋先生の右玉...
対するのは、関西の雄・糸谷哲郎八段。竜王位の経験があり、順位戦はA級という堂々たるトップ棋士。ネット番組でのDJダニーとしてもお馴染み。右玉を特異とし、角換わり右玉はもちろん、対振り飛車の戦法「糸谷流右玉」の創始者としても有名だ。
本譜は角換わりから後手が右玉、先手は意表の角打ちから打開を狙うという展開となった。
棋譜は公式サイトの以下からどうぞ
2020年08月30日 第70回NHK杯2回戦第3局
動画で観たい場合はこちら
※本譜の局面図はNHK様の許諾を得て利用させていただいております。
青嶋流右玉の出だし
序盤、後手は角交換を誘い、△4三銀。このまま飛車先を受けずに囲うのが青嶋流の右玉で、「現代右玉のすべて」でも第1章で詳しく紹介されている。
先手、意欲的な▲4六角打
糸谷八段は序盤早々角を手放す▲4六角打を決断。
この手は6四の歩を狙っている他、▲2四歩、△同歩としてしまうと、▲同角、△6一玉、▲5一角成! △同玉、▲2二飛成という大技が決まってしまう(以下、変化図1)。
変化図1
こうなってしまうと先手勝勢。6四の歩は諦める手も見えるが、青嶋六段は堂々と△6三銀。
▲2四歩には、△3二銀と柔らかく受けた。
これで大技の筋はない。しかし、▲2三歩成、△同銀、▲2四歩打で拠点は作られた。
先手、後手の囲いが完成する前に仕掛ける
43手目、先手は後手が居玉のタイミングで▲1五歩と仕掛ける。
しかし、ソフトはあまり評価しておらずここから後手有利の形勢に。
4筋も突き捨ててから▲1五香!
ここで△同香とすると先手の攻めに勢いがついてしまうので、△1四歩打が好手。
以下、▲3四歩打、△1五歩、▲3三歩成、△同金(以下図)。
結果をみれば、桂香交換で先手は歩切れ。後手が大きく得をした形だ。
青嶋六段、正確な指し回し
先手は、▲4五歩、△同歩に、▲5五角!
後手としても怖い局面。△5四歩のような甘い手だと、▲2三歩成が厳しく刺さる。
また、▲4四桂のような手も残っている。ここ青嶋六段が好手。
△1九角打!
恐らく糸谷八段も読み筋だったと思うが、やはりこの手が痛い。角を切って、飛車を寄るが後手は天王山に馬を作ることができた(以下図)。
後手の右玉が堅い
後手は66手目にして右玉を完成させる。先手はと金が飛車先を邪魔し、歩切れなことが痛い。
切れ味抜群の終盤
終盤の局面。△5九銀打で先手陣には火が付いた。対する先手も▲4三銀打と迫る(以下図)。
ここで、△6二銀成、▲同金に、△4三金(以下図)。
ここは当然、▲同飛成……に見えるが、▲7四桂としたのが糸谷八段らしいうまい手。
△同銀と取らせて、薄くなった状態で、▲4三飛成を決めた(以下図)。
後手、寄せ切る
最終盤。先手は▲7八金打で受けたところ。自陣に詰みはないので、△7七香打や△7七銀打などで詰めをかければ勝ちだが、即詰みがあった。青嶋六段は見事寄せ切る。
ぜひ、詰み筋を考えてみてほしい。本譜の詰み筋はこちら。
というわけで、本譜は糸谷八段の攻めも迫力があったが、青嶋六段の快勝となった。
右玉NOWは今後も青嶋六段を応援します!