2021年2月4日に行われた順位戦B級1組の対局で、先手番となった山崎隆之八段がプロ棋戦では珍しい対振り右玉を採用してくれたので紹介したい。
山崎隆之八段は、B級1組でここまで9勝1敗。勝てば1局を残してA級に昇級するという大一番。実力的にはA級を経験しても不思議ではない棋士だが、ここまでA級経験はなし。是が非でも勝ちたい一局だろう。
対するのは久保利明九段。ご存知振り飛車党のトッププレイヤーで、裁きのアーティストの異名も。終盤の驚異的な粘りにも定評がある。
棋譜は名人戦棋譜速報(有料)、もしくはスマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」で観戦できるのでそちらからもどうぞ。
後手向飛車 vs 右玉へ
前述した通りの大一番ではあるが、山崎八段は棋風通り自由な序盤。
対する久保九段は向飛車へ。山崎八段は▲3二金を入れたあと、右玉で構える。
いわゆる対振り右玉で、糸谷流右玉と呼ばれる形だ。
プロの対振り右玉は珍しいが、去年11月の朝日杯オープンでは、久保九段が右玉側を持っている。この対局は非常に驚きだった。詳しくは、以下のエントリをどうぞ。
後手やや有利へ
本譜は後手が三間に振り直し、先手は▲2七金。対三間でよくある手筋だ。先手としては、入玉も視野に入れつつ盛り上がっていきたい。しかし、相手は振り飛車のスペシャリスト。大駒を巧みにつかい、リードする。
ちょい悪から逆転へ
山崎八段と言えば、悪くなってからの逆転でも有名。いわゆる「ちょい悪逆転術」で、NHK将棋講座にもなっている。「逆転のメカニズム」という棋書もあるほどだ。
リードを広げさせず粘り、90手目あたりから評価値的には逆転。96手目あたりは先手有利と言ってもよいだろう。
ただし、後手陣は堅く、先手は薄い。ちょっと間違えればひっくり返るところ。
再逆転も悲願のA級へ
100手目、後手の食らいつきに角を交わしたが、この手あたりから再逆転模様。後手はギリギリの攻めをつなぎ、そのまま押し切った。
というわけで、山崎八段の負けとなってしまったが、郷田八段も負けたため、山崎八段の2位以上が確定。悲願のA級昇級となった。
山崎八段、昇級おめでとうございます!
右玉NOWは、今後も山崎隆之八段を応援します!