2019年9月13日、日本将棋連盟が「棋譜利用に関するお願い」という記事を公式ホームページ上にアップした。
<棋譜利用に関するお願い>
公益社団法人日本将棋連盟と各社が主催する棋戦で作られる棋譜は両者の共通の財産であり、棋譜の無断使用は両者の財産を損なう恐れがあります。 商業的目的に供する場合など、私的利用の範囲を超えて棋譜(図面を含む)を使用される場合は、事前に下記フォーマットへご連絡をお願いいたします。
それまでは、ブログ、SNS、YouTube等でプロ棋戦の棋譜や局面図は特に制限なく気軽に紹介されていたが、これ以降は、日本将棋連盟の許諾が必要になった。
まずは、「棋譜利用に関するお願い」以降に起こったことを時系列で振り返ってみたい。
棋譜利用問題に関するタイムライン
2019年9月13日 日本将棋連盟「棋譜利用に関するお願い」を発表
2019年12月 棋譜利用申請フォーマットに「個人情報の取扱いへの同意」が追加。それまでは申請者の個人情報の扱いが不明だった。※参考
2020年2月26日 将棋YouTuber、「日本将棋連盟及びそのスポンサーを訴訟する準備が整いました【緊急告知live】」という動画をアップ。
2020年3月3日 将棋YouTuber、日本将棋連盟に公開質問状を送付。
2020年4月17日 日本将棋連盟、「棋譜利用に関する公開質問状への回答」を公開。
2020年6月14日 日本将棋連盟、「棋譜利用に関する公開質問状への回答」を公開。
「現在は多くの棋戦にて、棋譜申請に対して回答を行っている」
「棋譜の利用は法的に保護されていると認識」
「ガイドライン作成には時間がかかる」
2020年9月3日 日本将棋連盟、「王座戦における棋譜利用ガイドライン」を発表。3図までは商用・非商用、期間に関わらず申込不要で利用可能という内容。
2020年12月14日 日本将棋連盟と毎日新聞社「王将戦の棋譜利用について」を発表。棋譜利用は申込みの上利用料が必要。対局から2ヶ月経過後は利用料引き下げ、もしくは無料という内容。
2022年6月1日 日本将棋連盟と産経新聞社「王ヒューリック杯棋聖戦における棋譜利用ガイドライン」を発表。商用利用の場合、3図までは主催者の承諾不要(対局中は不可、要クレジット)。「Twitterなどで「4三銀は良い手だね」とつぶやくようなケースも「棋譜の利用」にあたります。」とのこと。
2022年7月8日 読売新聞、「竜王戦の棋譜等利用ガイドライン(案)について」を発表。「盤面図を利用せず、かつ、1対局につき合計10手以内の範囲において当該対局の指し手に言及すること」は利用許諾不要に。適用は2022年10月からはじまる第35期竜王戦七番勝負からの予定。
棋譜利用問題の現状のまとめ(追記あり)
・王座戦と王将戦のみガイドラインを作成済み。他棋戦は公式には態度を表明していない。
・SNSでプロ棋戦の局面図を見ることはほとんどなくなった。これは将棋連盟の意図した通りの結果だろう。
・一部将棋系YouTuber、ブロガーは「棋譜利用のお願い」を完全無視。将棋連盟側の対処は不明(グレーのまま放置している印象。一部対応している?)
日本将棋連盟より、現時点で申請済みの棋譜は利用可能との返信がありました。ありがとうございます。
・ガイドラインは協議中で今後変更の可能性はある。
・放送があるものは完全に終了したあと。
・棋戦名、対局者名、主催クレジットは必須。
・引き続き棋譜利用の申請は必要。
とのこと。大きな動きだと思います。これまでは将棋連盟以外の主催者、いわゆるスポンサー側からの返信のみでしたが、将棋連盟からの直接の返信は初めてです。もしかしたら、棋譜利用が緩和される動きかもしれません。
右玉NOW調べによる各棋戦の対応状況
竜王戦……棋譜利用は不可。局面図は有料で使用可能
順位戦・名人戦……2ヶ月以内は有料、要クレジット記載
叡王戦……返信一切なし
王位戦……有料で使用可能
王座戦……ガイドラインあり
棋王戦……返信一切なし
王将戦……無償で使用可能だったがガイドライン発表で変更
棋聖戦……返信一切なし
朝日杯将棋オープン……対局後、2週間後から使用可能
NHK杯将棋トーナメント……申請すれば許諾をいただける
女流王座戦……申請すれば許諾をいただける
マイナビ女子オープン……申請すれば許諾をいただける
清麗戦……返信一切なし
白玲戦……返信一切なし
女流王位戦……使用不可
以上のように棋戦による対応は大きく異なっている。返信をいただけない棋戦も未だ多い。
右玉NOWの希望
各棋戦は、そろそろガイドラインを発表してほしい。理想は王座戦以上の緩さだが、「現状は一切不可」でも良いので、態度を表明してほしい。
それから、棋譜利用の申請は、将棋連盟の用意したフォーマットに沿って個人情報を明らかにして行っているので、テンプレで構わないので返答はほしい。無視するのであれば、「○○棋戦は棋譜利用一切禁止」として申請を受け付けないほうが良いのでは?
それと、以前にも書いたが以下のシステムが可能なら嬉しい。
日本将棋連盟がオフィシャルな棋譜データベースを公開する。マネタイズに関してはアドセンスなどの広告が嬉しいが、月額会員制でもよいだろう。
棋譜利用をしたいブロガーやYouTuberは、公式棋譜データベースの対局ページに対してリンクを貼ることを利用の条件とする。
スポンサー側としては、棋譜利用されたくない棋譜はデータベースで公開をしない。もしくは、観戦記掲載後など一定期間後に公開をする。ブロガーやYouTuberは、公開されていない対局の紹介は禁止(法的に禁止できるかどうかは置いておいて……)。
なかなか難しいだろうが、将棋連盟、スポンサー、ブロガー、YouTuber、将棋ファンがWINWINな結果が理想だ。
棋譜利用問題について書くと、「棋譜を利用したいなら、お前がスポンサーをやれ、このハイエナが!」みたいな意見を必ずいただくが、将棋連盟が一切の棋譜利用を拒否するのであれば、それに従う予定だ。現状は申請して許諾を得れば利用可能という状況であることは理解してほしい。
以上、棋譜利用問題の現状ででした。
右玉NOWは今後も日本将棋連盟を応援します!