先日のエントリで伊藤沙恵女流二段の右玉を紹介したが、実はその1年前、同じ伊藤-加藤戦でも右玉が指されていた。
女流王座戦準決勝で伊藤女流二段が右玉を採用して勝利!
最近では公式戦での右玉は珍しくなくなったが、女流棋戦も例外ではない。 8月29日には、リコー杯女流王座戦本戦トーナメント準決勝で、伊藤女流二段が右玉を採用してくれた。 棋譜は以下を参照してほしい。 先手矢倉に対して、後手は右玉へ! 右玉党注目の一局となった。
舞台は女流王将戦の挑戦者決定戦。
先日の女流王座戦と違い、加藤女王が右玉側。
まずは、以下の棋譜を並べてほしい。
公式サイトは以下。
第39期 女流王将戦 本戦トーナメント 挑戦者決定戦(Flash)
Flashで表示できない場合は以下をどうぞ。
第39期 女流王将戦 本戦トーナメント 挑戦者決定戦(Javascript)
対局は、加藤女王の右玉が優位に進めるも終盤で大逆転。その後は逆転の連続という観戦者からすると面白い将棋となった。
将棋ソフトで棋譜解析を行うと以下のような感じである。
それではポイントを解説していきたい。
序盤の駆け引きのあと、先手右玉へ
序盤はやや変則的な出足で、お互い警戒し合う感じだったが、加藤女王は右玉へ。この時点ではほぼ互角。
わずかな隙を加藤女王見逃さず
先手が4六歩と突いた局面。この手は悪手で、右玉側に好手がある。加藤女王は見逃さなかった。
1五角!
5九角成を狙っているが、意外と受けにくい。
6九玉や6八銀などで受けると、3四歩打がある。
以降は2四歩、同歩、4五歩、5九角成で右玉は馬を作ることに成功する。
右玉優勢に
上図は先手が4四歩とした場面。しかし、この手も甘かった。
後手は強く同金!
同銀に対して、4六角が王手飛車。
先手は6八飛で頑張るが、同角成、同金引、4九飛打が王手銀取り。
この時点で右玉側が1000以上の優勢となる。
玉頭を巡る戦い
ここからしばらくは玉頭戦。
下図は歩の連打で飛車を呼んだところ。
ここでの判断は難しいが、最善手は飛車を見捨てて8六銀と銀を取りつつ玉頭に迫る手。
そして、加藤女王の手も8六銀だった。
お互いに攻めあって、8七歩打の王手。
ここでは先手を考えてみてほしい。
同金、9八玉、7九玉が考えられるが……。
正解は9八玉。
ほかの手はいずれも詰み。
加藤女王、痛恨の悪手で寄せ損なう
以下の局面は、先手が飛車と角と王手をしたあとに、8七金と歩を外したところ。
かなり難解だが、加藤女王は9一銀成、同玉、9七銀成を選択。
自然な感じだが、これが悪手だった。
とても悪手に見えないところが将棋の怖いところ。
この局面、超難解だが、後手玉に詰みがある。
腕に自身があれば読み切ってほしい。
(後ほど紹介する解説動画でも解説者が読みきれてなかった)
以下のリンクで詰み筋を再生できるようにしたので、興味のある方はどうぞ
※後手玉詰み筋
少し戻った局面。
8七銀成とすれば、後手優勢だった。
同玉、4七龍、6七銀打、8六歩打。
ここで8八玉は詰み。同玉と取るしかない。
8五銀打、8七玉に8九銀成。
この局面は後手玉は詰まず、後手勝ちとなる。
最後は大逆転で伊藤女流二段の勝ち
以降は、伊藤女流二段が王手で追いつつ8七の銀を外すことに成功。
この局面は先手大優勢。
伊藤女流二段の大逆転勝利となった。
なお、YouTubeにこの対局の中継動画がアップされているようなので、興味があればどうぞ。
(消されるかもしれないが)
将棋 Shogi ・ 伊藤沙恵 Sae Ito vs 加藤桃子 Momoko Kato 2017 #1 (矢倉 vs ツノ銀雁木右玉 Right King Silver Horns Snowroof)