2018年9月21日のA級順位戦 豊島将之棋聖 vs 佐藤康光九段の一局で、佐藤九段が右玉を採用した。
最近は、プロ棋戦での右玉採用が多くて喜ばしい限り。それも、今回はA級順位戦という大舞台である。
佐藤九段と言えば、独創的な序盤が魅力。それは右玉でも変わらない。現在は将棋連盟の会長としても活躍中。
一方の豊島棋聖は、序盤、中盤、終盤、隙がないことでおなじみ。若い頃から超強豪として活躍し、タイトルが取れないことが将棋界の10大ミステリーの1つだったが、ついに棋聖位を獲得。これから豊島時代が到来してもおかしくない。
棋譜は以下からどうぞ
2018-09-21 順位戦豊島将之 棋聖 vs. 佐藤康光 九段 第77期順位戦A級3回戦
阪田流向かい飛車風の出だし
序盤、先手の角交換を3三金と取る。阪田流向かい飛車風の出だしだ。
6八玉に対して、追撃の4四角打。
このあたりは佐藤九段の研究手だろうか?
佐藤九段は8筋を伸ばす。つまり居飛車。
序盤から独創的な構想だ。
佐藤九段、右玉へ
少し手が進み、佐藤九段は右玉を選択。3三金型は非常に珍しい。
後手は6二玉型で駒組みを進めていく。
右玉の難敵、5六角打
豊島棋聖は、3四歩が浮いている瞬間を狙って5六角打!
この角打ちは右玉にとって難敵。
ソフトの評価は互角だが、先手有利にやや近い。
右玉NOWでは近い形を研究しているので参考にしてほしい(右玉側が先手)。
角交換風車右玉と5四角打の戦い
角交換型6七銀型の右玉(風車右玉)に対し、矢倉側が△5四角打と打ってくることがある。 3筋、7筋の桂頭を狙う手で、初見では受けづらく、対応を間違えると、すぐに潰されてしまうだろう。 実際、△5四角打ちがソフトの推奨手になることも多い。 後手...
後手4三銀に対して、先手は7五歩。この桂頭狙いが受けにくい。
手筋としては、6五歩と一瞬角筋を止め、7四歩、同銀、7五歩打、6三銀、6五歩、5一玉、6四歩、同銀、7四歩、6五桂、7六銀、9五角打などが進行の一例。
しかし、佐藤九段は堂々と同歩と取った。
当然ながら、先手は7四歩。桂損でも相手が歩切れになるため戦えるということだろうか?
ソフトの評価は先手有利に。
先手の悪手で後手盛り返す?
その後は先手が堅実な指し回しでリードをするが、次の局面。
9二龍と入ったところだが、この手は悪手。ソフト評価値は先手優勢から、互角の局面に。
佐藤九段は4八歩成を選択。
しかし、ここは3七全で、桂馬を外したほうが良かったか。
3八角と銀を取られてしまう。
豊島棋聖、長手数の詰みを読み切る
その後は、再び先手に形勢が揺れて次の局面。
6一馬と入っても勝ちだが、実は詰みがある。読みきれるだろうか?
正解は5一銀打!
そして、豊島棋聖も読み切ってこの順に踏み込んだ。さすがは隙がない。
同玉、7一飛打、4二玉、5二龍(4三歩打のほうが早かったが)、同玉、6一馬、4二玉、4三歩打にて先手投了。
詰みまで見たい場合は、こちらをどうぞ。
以上、不発に終わってしまったが、佐藤九段の右玉も面白い構想だった。また、ぜひ採用してほしいところだ。
佐藤康光九段といえば、一手損角代わりの本も名著なので参考にどうぞ。