以前紹介した以下のエントリの続きとなる、青嶋五段の右玉を紹介したい。
第二回叡王戦予選から青嶋五段の先手右玉を紹介!
今回は2016年8月3日に行われた叡王戦五段予選準決勝の船江恒平五段 vs 青嶋未来五段の一局を紹介したい。 船江五段(当時)は「ふなえもん」の愛称で人気。電王戦参加棋士でもある。 一方、青嶋五段は右玉党にお馴染み「現代右玉のすべて」の著者...
叡王戦五段予選の準決勝で船江恒平五段を先手右玉で下した青嶋五段は、千田五段に対しても右玉で対抗した。
対局相手の千田五段はコンピュータ将棋に精通した若手強豪棋士。
棋譜は以下からどうぞ。
2016年8月3日19:00~ 青嶋 未来 五段 対 千田 翔太 五段
前局同様、ニコ生のプレミアムユーザーであれば、タイムシフト視聴ができる。
第2期叡王戦 五段予選 村田・船江・千田・青嶋
2二金で保留したまま駒組みを続ける
先手から角交換して同金とした局面。後手は一般的に3二金と戻す必要があるので、先手も手損はない形。
飛車先を受けず、2二金も保留したまま駒組みを続ける。これが青嶋流。
後手、右玉へ
2二金のまま、6二玉として後手は右玉へ。
この局面は「現代右玉のすべて」のP34第31図と端の突き合いがない以外はほぼ同じ。
ソフトの評価値もほぼ互角。
後手としては、3筋に飛車を展開する攻め筋もありそうだが、ソフトの評価は高くない。
先手3八角との戦い
先手は3八角打として、角を設置。
右玉の難敵となるのが筋違いとなるこの位置で、同様に4七角打、5六角打にも警戒しなければならない。
狙い筋は桂頭はもちろん、9筋の歩を突き捨てて、9二歩打という攻めもある。これらをケアしていこう。
ちなみに3八角打(4七角打)はソフトの候補手でもある。先手から打開するならこの手か。
ただし、評価値は互角なので、後手の右玉としても悪いわけではない。
続いて、先手が6筋に展開した局面。この攻め方も、対右玉の筋でやっかいな相手となる。
ソフトの読み筋は戦場を避ける5一玉。いかにも右玉的な感じ。
青嶋は4一飛として攻め合いを選択。ソフト的には、やや評価を落としてしまっている。
先手は6七銀と引く。受けの手というよりは、角筋を開けたという意味だろうか。
右玉から開戦
右玉は堂々と4五歩。
対する先手は7五歩。角打ちからの狙い筋で、右玉としても受けにくいところ。
同歩に対して、先手は当然7四歩打。これで桂馬は助からない。
桂損だが、先手は歩切れになるので、右玉としてはそこをつきたいところだが……。
先手は7三歩成はいつでも実行できるということで、9七桂。矢倉側からはちょっとめずらしい攻め筋だ。
後手はここで4七歩成を敢行。
これを同角と取ると、7四銀(同角は4八飛成)とすることができるので後手有利になる。
というわけで、先手はここで7三歩成。同玉に4七角。
後手は7四角打と打つ展開になった。
後手、歩で敵の陣形を乱す
少し進んだ局面。先手は4七飛成と入れる場面で、5八角打と両取り。
6八飛、4七角成、8五桂、7五銀と進んで次の局面。
ここからは歩を使った攻めのお手本のような手筋。
7六歩、同銀、7七歩、同金、5七馬。
先手の堅陣があっという間に崩壊しつつ、飛車取りに。
しかし、これは先手も想定していた画面で、先手優勢。
ここからの千田五段の踏み込みは見事だった。
千田五段の見事な踏み込み
まずは、8四角打。詰めろなので、6八馬とはできない。
8三金打と受けるが、次の手が好手だった。
6四銀!
この銀を取ってしまうと、7三歩打、6一玉、6四飛。
というわけで、8四馬と角を外すが、7三銀打。
同金、同桂成、同馬、同銀成、同玉と精算した局面が以下。
手番は先手で、先手勝勢。
以下、7三歩打、同銀、6四金、7二玉、7四金打。
ここから歩の連打などで粘るが……。
6七歩打、同飛、6六歩打、同飛、6三歩打、7三銀打、6一玉、6三金、4八飛成、6八歩打で、後手投了。
最後は、千田五段の攻めが完全に決まった。
というわけで、右玉が負けてしまったのは残念だったが、右玉党にも勉強になる一局だったと思う。
大川 慎太郎
【千田五段のインタビューあり。名著。】