棋聖戦予選、佐々木大地五段と広瀬章人竜王の対局は相掛かりから相右玉になるという珍しい一局となった。
佐々木五段は、2019年2月20日に五段に昇段したばかり。
対広瀬竜王では、今年1月の王位戦で右玉を採用して勝利している。
佐々木大地四段が右玉で広瀬竜王を撃破!
2019年1月18日の王位戦予選で、佐々木大地四段が広瀬竜王に対して、変則的ながら右玉を採用してくれた。 佐々木大地四段といえば、若手強豪。本対局の直近12戦で11勝1敗と好調だ。 昨年度は王位戦挑戦者決定リーグにも進出している。 一方の広...
一方の広瀬竜王は、現役トップ棋士の一人。渡辺二冠、豊島二冠、藤井七段、そして広瀬竜王が現在の四強だとミギーは思っている。
広瀬竜王は意外と右玉に縁があり、対局者が右玉を採用することが多いほか、広瀬竜王自身も2月の棋王戦で右玉を採用したばかりだ。
広瀬竜王、棋王戦の初戦で右玉を採用!
広瀬章人竜王が渡辺明棋王に挑戦する棋王戦の初戦で、広瀬竜王が相掛かりの出だしから途中で右玉へと変化した。 広瀬竜王は現役トップ棋士の1人。最近は右玉を相手にすることも多く、右玉にやや苦戦している印象。 一方の渡辺棋王は強豪ばかり相手に15連...
というわけで、棋譜は以下から参照してほしい。
2019-02-26 棋聖戦佐々木大地 五段 vs. 広瀬章人 竜王 第90期ヒューリック杯棋聖戦二次予選
相掛かりから相右玉へ
序盤は相掛かり模様。ミギーは相掛かりを指さないのでまったくわからない未知の局面である。
飛車の位置以外はほぼ同型で手が進んでいく。
後手がまず右玉へ。
後手は銀を繰り出す。玉周りが薄くなって怖いので積極的な手だ。
先手も右玉へ。後手の形はかなり変則だが、相右玉といってよいだろう。
ぱっと見は先手の形がよさそう。ソフトの評価値もわずかに先手のほうがよく、評価値は+320(先手有利)ほど。
先手から角打ちの仕掛け
後手が4二銀と引いたところ、先手は8八角打ち。この角が生きてくるかどうかの勝負となった。
3三銀と角成を防いだところで、3五歩から仕掛け。玉頭で怖いところだが、仕掛けるならここか。
同歩に3四歩と突き、2二銀と引いたところで4四角と出る。先手の攻めが好調が見える。
ここは合駒ではなく7二玉と逃げるのが好手。
先手は継続手として7五歩。対右玉の急所となる筋だ。
しかし、これは佐々木五段本人が「少し指しすぎ感もある(モバイル中継より)」としているように、指しすぎだったかもしれない。
後手の対抗は8四角打。
同歩と同銀もあったようだが、この手も良い手だ。
攻め合いで後手有利に
先手が8六歩と桂頭と角を攻めているところ。ここで後手が反撃。
3四歩で角取り。
8六歩に対して、7三角と引き、先手も1七角と引く。
3六歩が激痛か。しかし、後手も薄い。
同銀、4六飛に4九飛とぶつけ。後手も飛車打ちには怖いところだが……。
同飛、同玉に6二金!
この手が好手。先手が優勢を維持している。
後手、次の一手のように華麗に決める
局面は少し進み、先手が次の5四銀からの詰めろを見せて優勢そうにみえる局面。
3七角成や1七龍は詰まされてしまう。4五金は詰めろが一瞬外れるが、同桂が幸便過ぎて先手勝ち。
というわけで、先手勝ちに見えてしまうが、驚くべきことに次の後手の一手で先手は投了してしまうのである。
次の一手問題としても優秀だとおもうので、考えてみてほしい。
まずは惜しい手から。
詰めろを防ぐ4四香打!
この手を少しでも考えた人はセンスがあるとおもう。
先手は5四銀とできない(王を取られるため)。
同角は同金となって、詰めろが解除される。
しかし、これは優勢を維持できるだけで、まだ先は長そうだ。というわけで次が正解手。
3八銀打!
この手を見て先手は投了。美しい投了図となった。
この手の意味はなにか?
まずは同玉を考えてみよう。
同玉には3七角成。これを取ってしまうと、1七龍と王手をかけつつ角を外すことができる。
先手は手が広いが、2七銀打と2七角打の合駒は4五金、3八玉は4六桂打、4八玉には2六角打がありそう。いずれも先手勝勢。3六玉は2四桂から詰み。
というわけで、先手の最善手は5一玉と逃げる手だが、これは3七角成が王手で入る。
3七馬。4八金とした場合は、同馬、同玉、4七銀成、同玉、1七龍で角を外せる。
6二玉なら4六馬の王手、6一玉なら4五金と銀を外せば先手勝勢となる。
というわけで、最後は華麗に決めて広瀬竜王が相右玉の戦いを勝利した。
序盤は先手の作戦勝ちだったので、逆転といってもよいだろう。
というわけで、右玉NOWは広瀬竜王と佐々木五段を応援します!