2019年6月11日に行われた王将戦一次予選 阿部健治郎七段 vs 西尾明七段戦で、先手の阿部七段が右玉を採用してくれた。
阿部健治郎七段といえば、序盤研究家として有名で、三浦九段との共著もある。
1月の竜王戦では、羽生九段に対して後手右玉で挑んでいる。
竜王戦予選で阿部健治郎七段が羽生九段相手に右玉!
竜王戦予選1組、羽生善治九段 vs 阿部健治郎七段にて、阿部七段が右玉を採用してくれた。 阿部七段は若手強豪の居飛車党。三浦九段との共著もある。 一方の羽生九段は言わずとしれたレジェンド。竜王の称号は取り返したいところで、ここは負けられない...
対する西尾明七段は、最近はギタリストとしても有名だが、コンピュータ将棋についても詳しい強豪だ。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ。
2019年6月11日王将戦一次予選 阿部健治郎 – 西尾明七段
先手、右玉からセカステ右玉に変化
先手の作戦は右玉。先手でストレートで右玉にすることはプロ棋戦では珍しい。
1筋を突き越せたことが大きな要因だろう。
さらに、5六銀、4七金を入れてセカステ右玉へ。
最先端で蘇るセカステ右玉
最近、プロ棋士や強豪ソフトが右玉を採用するケースが多いが、中でも際立っているのは角換わり腰掛け銀から変化する「セカステ右玉」の形だ。 そこで、今回はセカステ右玉の話をしていきたい。 名人戦でセカステ右玉が登場! 先日行われた名人戦第3局。こ...
いわゆる流行のセカステ右玉ではなく、昔からあるセカステ右玉といえるかもしれない。
後手は手待ちし、先手強引に仕掛ける
後手は中住まいに。ここから5二と4二の位置を変える手待ち模様に。
先手は4筋の位を取り、金を進めていく積極的な構想。玉はスカスカだが、広さを生かす感じか。この時点でのソフト評価値は互角。
手待ちを続ける後手に先手は3五歩という積極的な仕掛け。
しかし、結果的にはこの手には無理があったか。
先手は5三角と積極的に攻め駒を攻めてくる。
右玉、粘る
局面は進み、先手は角切りから右玉を薄くしたところ。右玉だけ終盤のような形で苦しいが、ここから手順を駆使して粘る。
後手は5五歩。筋の一手だ。
先手は堂々と同銀!
5四歩打があるが……。
先手は1六角の攻防手で粘る。
4七金打、4六玉、5五歩で、3九歩打。
積極的に攻め駒を攻めて切らすのが狙いだが、次の後手の手も好手。
1四歩!
角を攻める手。ここで、角を見捨てれば3八歩、1五歩、4七玉、1六歩(下変化図)とすれば、金銀を外してすっきりするが、7筋の壁形も響いて、後手優勢(評価値は後手に1400ほど)となる。。
変化図
先手はこの変化を選ばず、4四歩、2七銀打、同角、同銀、同玉、3三桂と進行する。
先手は3六銀と打って粘る。
4六金に3五銀。手順に守備駒を増やす。しかし、ここから後手も攻めも正確だった。
送りの手筋を駆使して先手を追い込む
3五銀に対して、3六金、同銀、5八角打。
この角打ちが厳しかった。4七で受けても、2七銀打から送られて馬を作られてしまう。
3六角打で粘るも、2八金打。
同玉、3六馬に対して、4六金打! 先手に粘りも素晴らしい。
同馬、同銀で、危機を脱した。
が、後手玉も無傷なので、形勢は後手勝勢。
この銀を繰り出して攻め味を見せるも、3六角打が決め手で先手投了。
残念ながら、先手セカステ右玉の工夫は生きなかった。
結果的には、受け一方の苦しい展開となったが、金を繰り出す新しい構想、終盤の粘りなど右玉党に参考になる手も多かった。
先手では厳しいかもしれないが、後手なら十分アリな構想だろう。
というわけで、右玉NOWは今後も阿部健治郎七段を応援します!