※2019年12月7日に毎日新聞社様から局面図の許諾をいただけましたので追記しました。
2019年11月19日に行われた王将戦挑決リーグ、羽生善治九段 vs 糸谷哲郎八段戦で、一手損角換わりの課題局面となったので紹介したい。
ちなみに同時刻には藤井聡太七段の初タイトル挑戦がかかった一局もあったため、好カードではあるが、注目度は低かったかもしれない。
まずは、本局に至る出来事を簡単に説明しておこう。
羽生九段が一時愛用していた一手損角換わり7二金型右玉だが、以下のような対策が考え出された。
8八銀・6八玉型で早繰り銀にする戦法で、これが後手番からしたらやっかいな陣形なのだ。
このまま後手番が7二金型右玉にしようとすると、よくなる筋が見つからない。詳細は以下エントリを見てほしい。
一手損角換わり右玉 vs 8八銀・6八玉型早繰り銀 右玉にするのは厳しい?
一手損角換わり7二金型右玉に対して早繰り銀で攻めるのは常套手段だが、8八銀・6八玉型で攻めてくる作戦はかなりやっかいだ。
羽生九段が最近7二金型右玉を採用しないのは、この形がイヤなのでは? とも考えられていたが、実際、本局では羽生九段自身が先手をもってこの形になるのである。
一方、後手の糸谷八段はこの形を十分承知のうえで一手損角換わりを敢行する。
11月8日に行われた棋聖戦では同局面から稲葉陽八段相手に四間飛車にして勝利している。
こちらは、以下エントリを参考にしてほしい
糸谷哲郎八段、一手損角換わりの課題局面を四間飛車で対応して勝利!
2019年11月8日に行われたヒューリック杯棋聖戦で、糸谷哲郎八段が一手損角換わりから四間飛車にするという作戦を採用した。 正確には右玉にはなっていないが、右玉党にとっても重要な局面が出てくるので紹介したい。 糸谷哲郎八段といえば、右玉の採...
棋譜は、スマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」、もしくは名人戦棋譜速報(有料)からどうぞ
デジタル毎日会員は以下から閲覧できるはずです(未確認です、すいません)。
第69期大阪王将杯王将戦挑決リーグ 羽生九段-糸谷八段 – 毎日新聞
関連記事です。デジタル毎日会員でなくても最初の方は読めます。
第69期王将戦リーグ特選譜:羽生九段が果敢な角切りで攻めきる 糸谷八段「仕方がない」 – 毎日新聞
後手の四間飛車に対して▲3七桂
糸谷八段の対策は四間飛車。右玉NOWでも何度か解説しているが、四間飛車にするのが最良の方法かと思われる。糸谷八段は早繰り銀に対する四間飛車はよく採用しており、研究もあるだろう。
四間飛車に対する羽生九段の対策は▲3七桂。いままでは▲3五歩だった。
ソフト的には互角だがこの手も良さそうな感触だ。
先手、▲5六角打
先手は3筋の歩交換をしたあとには▲5六角打。
後手は△6三角打で対抗するが、結果的にこの角が狙われることになってしまった。
後手は変則的な右玉にするも陣形の形は大差。後手は銀飛車交換で駒得を果たすものの、陣形の差は埋まらず形勢も大きく先手へ。
馬のタダ捨てから一気に寄せる
79手目▲8一馬が強烈な一手。馬を捨てて一気に寄せに入り、さすがの糸谷八段も粘りようがなかった。
一手損角換わり7二金型の未来は?
羽生九段が一手損角換わり7二金型を最近敬遠している理由は、8八銀・6八玉型の対策でほぼ間違いなさそう。四間飛車にする対策が完全に潰されたわけではないため、今後も公式戦で出現する可能性はあるが……。糸谷八段には期待したい。
右玉NOWは今後も糸谷八段を応援します!