2019年11月22日に行われた順位戦A級で、先手の佐藤康光九段がかなり変則的な右玉を採用してくれたので紹介したい。
佐藤康光九段は現在、日本将棋連盟会長。羽生世代の一流棋士で、独創的な序盤戦術でファンに人気だ。右玉の採用も多いが、一風変わったものが多い。一例は以下のエントリ。
対するのは、糸谷哲郎八段。一手損角換わりを得意とする関西のトップ棋士の一人。右玉の採用度に関してもトップクラスだ。DJダニーとしてもお馴染み。
本譜は後手番一手損角換わりに対して、先手は2七銀型という変わった右玉を採用する展開となった。
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糸谷八段の一手損角換わりに対して変則右玉へ
本譜は糸谷八段が一手損角換わりを採用する。
11月19日の羽生九段との対局では完敗となってしまったが、早繰り銀への対策があるのか興味深いところだ。
しかし、佐藤九段は早繰り銀ではなく、棒銀模様から右玉へ。ただ、右玉で呼んでよいかどうかは正確にはわからない。結果的には陽動振り飛車銀冠のようにも見える。が、公式の中継で右玉と言っているので、右玉でよいのだろう。
幻の千日手があったかもしれない
本譜は後手の攻めが成功するが、決め手は与えず佐藤九段も粘り強く指す。
問題は82手目の局面だ。
ここで、もしかしたら千日手に逃れる可能性があったかもしれない。
局面は掲載できないが、馬で王手桂馬取りがかかったところ。
金か銀で合駒をしたいところだが、カナ駒を使ってしまうと後手玉への詰めろが消えていまう。
そこで佐藤九段は▲1八玉と逃げた。
ここで後手が△4五馬と桂馬を外せば▲3二飛成から先手勝ち。
しかし、後手には△4二桂打という好手があった。
対して▲3三桂成とすると、△同桂が詰めろになるという仕組み。
本譜はこの手が決め手で、後手勝ちに。
しかし、▲1八玉の代わりに、詰めろは消えるが▲3七銀打と受けたらどうだろうか?
後手は△4五馬と桂を外すのが最善手。
そこで、▲4二金打。
△同銀、▲同馬、△3一金打、▲3二馬、△同金、▲3二金打。
これは千日手コースに入っていそう。
変化図
※変化図もダメなら連絡ください、将棋連盟様
千日手を逃れるとしたら、最初の▲4二金打で、△3五桂打も考えられる。
以下、▲3二金、△1三玉、▲3五歩、△4六桂打、▲4八金。
変化図
これは先手がギリギリ耐えているか。△3八金打から怖すぎるが。
というわけで、最後は千日手の可能性があったかもしれないが、先手右玉の負け。
しかし、佐藤会長の右玉はいつもユ二ークで興味深いところ。
右玉NOWは今後も佐藤康光会長を応援します!