【コラム】右玉の起源を求めて「将棋一手千盤:定跡講義」を手に入れた

コラム

前回までのあらすじ。

国会図書館のデータベースから目次に「右玉戦法」が載っている「将棋一手千盤」を入手したものの、「将棋一手千盤:定跡講義」とは違う本であった……。

【コラム】右玉の起源を求めて「将棋一手千盤」を入手
前回までのあらすじ 右玉の起源を調べるため、1956年発行の「平手将棋総まくり」を手に入れたものの、右玉とは無関係だった……。 今回は国会図書館のNDL ONLINEで「右玉」検索してヒットした最古の棋書「将棋一手千盤」...

「将棋一手千盤:定跡講義」ではあるが、Amazonをはじめ、ネットの古本屋では売っていない。
「国会図書館まで行くしかないか」、とも考えたが面倒。そこで発見したのが、国会図書館の複写サービス。有料で指定した文をコピーして発送してくれるというものだ。
利用は研究目的だが、ブログでの発表ということでも問題なく通過したので依頼することに。

待つこと数日。国会図書館からコピーが届いた!


これが表紙。

「定跡講義 将棋一手千盤」である。関根金次郎名人と高村徳次郎五段の書ということは、先日入手した「将棋一手千盤」と同じ。


奥付を見ると、昭和十一年の発行。西暦で言えば1936年である。定価は1円80銭。


目次に角落ちではあるが「本組み定跡右玉戦法」とある。

右玉戦法について触れているページ。

後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・v金 ・ ・ ・|二
| ・v金v桂v玉v銀 ・ ・v歩 ・|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 角 銀 ・ ・ ・ 銀 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 金 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし

これが右玉戦法。
角落ちの対振り飛車の上に、いわゆる右玉とは玉の位置が違うが、活字で「右玉戦法」と書かれた文書は探した限り、これが最古と思われる。
もっと古い書物があるかも知れないが、ネット経由で調べるのはこれが限界だろう。

ただ、前々回のエントリで紹介したとおり、1919年には右玉は指されており、「右玉」と呼ばれていたかどうかはわからないが、右玉戦法時代が最低でも1919年からあったことは事実だ。

というわけで現時点での結論は、

・1936年時点で「右玉戦法」という言葉はあった(ただし形は現在の右玉とは違う)。
・最古の右玉の棋譜は1919年

ということに。これより古い棋譜や書物を発見したらまた追記していきたい。

掲示板にて吉田正明さんより情報を頂きましたので転載しておきます。

2020/01/26のエントリ
将棋一手千盤:定跡講義での角落の将棋ですが
右玉という表現がされていますがどちらかというと△6三玉型の銀象眼囲いですね。
駒落将棋の定跡書では△4三玉型の金象眼が所司和晴さんの【決定版】駒落ち定跡にも書かれていますが、△6三玉型の銀象眼は昔から指されていますがあまり定跡書に掲載されていません。有名な実戦譜としては関根金次郎八段-阪田三吉六段の角落戦(上手勝) 明治41(1908)年9月などありますが、他にも数多くあるはずです。江戸時代にもあり天保14年(1844)年6月25日 天野留次郎(宗歩)-田中善造の角落戦で△6三玉型の銀象眼が指されています。26日のエントリと同じような形で△7二玉△6三銀△5三銀△8三金型は天明2(1782)年11月17日の御城将棋で九世名人大橋宗英-岡野和泉守の角落戦で指されています。

情報ありがとうございます。
り天保14年(1844)年6月25日 天野留次郎(宗歩)-田中善造の角落戦の棋譜は以下のリンクから見ることができます。

1782-11-17 江戸時代の古典棋譜岡野和泉守 vs. 六代大橋宗英 その他の棋戦

上手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v玉 ・v金 ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v銀v銀 ・v桂 ・ ・|三
|v歩v金v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六
| ・ 歩 ・ 銀 ・ 金 桂 銀 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ 金 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 角 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
下手の持駒:なし
手数=53  △6二玉(52) まで

こちらも角落ちですが、右玉っぽいですね。まさか18世紀からあるとは!

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