将棋YouTuberの牙狼(ガロ)さんが、「右玉を指しこなす本 対4八金型編」をKindleにて電子出版されたので紹介させていただきたい。
著者の牙狼さんは、将棋ウォーズ五~六段、将棋倶楽部24五~六段というアマチュア強豪。
元奨励会員ではないが、研修会に在籍経験があるとのこと。
作戦のほとんどが右玉というスペシャリストであり、YouTubeで数多くの右玉実戦動画を紹介されている。
牙狼さんのYouTubeチャンネル
牙狼チャンネル【右玉メイン】
アマチュア発の右玉本といえば、アジ夫こと細川大市郎さんの「とっておきの右玉」が有名だが(現在は残念ながら絶版。電子化希望)、それ以来となるだろうか。
本書「右玉を指しこなす本 対4八金型編」は、右玉が後手。手損のない角換わりで、先手が4八金型にした場合の変化のみ扱っている。ターゲットは狭いが、現代将棋でよく出現する形なので、実践で役に立つことは間違いない。後手右玉ではあるが、手待ちは一切せず、積極的に攻める手を中心に紹介している。
本書の変化はすべて並べてみたが、昔の将棋本でありがちだったココセな局面は一切なく(恐らくソフトのチェックはしっかりと入っている)、信頼度は高いといえるだろう。
価格は500円と棋書としては安価。Kindle Unlimitedメンバーなら無料で読むことが可能だ。
紙面の構成はこのような感じ。マイナビ本などで見られるフォーマットで、非常に読みやすい。
「右玉を指しこなす本 対4八金型編」インデックス
まずは本書で触れている局面をインデックス的に紹介したい。
序章 駒組み&▲4五桂速攻
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・v玉 ・ ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二 |v歩 ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩v歩|三 | ・ ・v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 桂 ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 銀 歩 歩 銀 ・ ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=27 ▲4五桂(37) まで
序章として▲4五桂速攻への対策方法を解説している。角換わり右玉を指すならば対策は必須だ。
第1章 ▲5六銀型
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v歩v歩v銀v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=33 ▲5六銀(47) まで
第一章は対腰掛け銀。右玉側は△4四銀から積極的に指していく。
第1節 ▲2四歩
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩 ・v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩 歩 ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=37 ▲2四歩(25) まで
飛車先の歩交換は自然だが、用意の反撃がある。
第2節 ▲4五歩
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩 ・v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 銀 ・ 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=37 ▲4五歩(46) まで
銀の行き先を問われるが、▲5五銀とぶつけていく。
第3節 ▲7九玉
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩 ・v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 銀 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=37 ▲7九玉(68) まで
先手は玉を安定させるが、ここでも積極策がある。
第2章 ▲4五歩型
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩v銀v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=35 ▲4五歩(46) まで
先手は腰掛け銀から4筋の位を取る。右玉側は上図から歩交換をしつつ△5三銀と繰り替え。その局面が第2章のテーマ図だ。
第1節 ▲6六歩
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 銀 ・ 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=41 ▲6六歩(67) まで
▲6六歩に対しては、四間飛車に振って戦う。
第2節 ▲4六角
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・ ・v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 銀 角 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=41 ▲4六角打 まで
先手は▲4六角と設置。右玉側は4枚右玉(最強右玉)を目指す。
番外編 4枚右玉に組むための条件
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一 | ・ ・v玉v金v金 ・ ・ ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀 ・v桂v歩 ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 銀 角 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 銀 歩 ・ 桂 ・ ・|七 | ・ 玉 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 後手番 手数=53 ▲6七銀(68) まで
右玉の理想形のひとつ、4枚右玉に組むための条件を紹介している。
第3章 ▲4七銀型
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩v銀v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 銀 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 玉 ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=34 △5四歩(53) まで
先手が▲5六銀を保留してくる場合の流れを紹介する。ソフトも愛用する右玉対策のひとつだ。
第1節 ▲7九玉
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩v銀v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 銀 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ ・ 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=35 ▲7九玉(68) まで
▲7九玉と自然に囲ってきた場合の対策。積極策で攻めていく。
第2節 ▲5八玉
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉v金 ・v金 ・ ・|二 | ・ ・v桂v銀 ・v歩v銀v歩v歩|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 銀 ・ 歩 銀 桂 ・ 歩|七 | ・ ・ 金 ・ 玉 金 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 後手番 手数=35 ▲5八玉(68) まで
有力な右玉対策である中住まいと戦う方法を紹介している。
右玉党はもちろん、右玉初心者にもおすすめ
ノーマル角換わり右玉対4二金型という限定された局面に絞った棋書であるが、実戦で出現しやすい形なので非常におすすめ。500円と安価であるし、右玉党はぜひ購入をおすすめしたい。右玉の入門編としてもありだろう。
プロ棋戦でも出現した4枚右玉(最強右玉)も出版物としては初紹介と思われる。
注意点としては主役である右玉側が後手なので、初心者には局面図がやや見にくいかもしれない。上下盤面をひっくり返して読むなど工夫をしてほしい。
牙狼さんによると、今後は対58金型、対地下鉄飛車、対早繰り銀、対棒銀などの出版を予定されているそうなので期待したい。
というわけで、右玉NOWは今後も牙狼さんを応援します!