2020年6月12日に行われた順位戦A級で、後手番の糸谷哲郎八段が一手損角換わりから7二金型右玉を採用してくれたので紹介したい。
糸谷哲郎八段といえば、右玉を得意としている右玉党憧れのトップ棋士。かつては関西若手四天王の1人に数えられ、竜王位の経験がある。ネットの将棋番組の出演も多く、DJダニーとして人気だ。
対する先手は斎藤慎太郎八段。今期よりA級に参戦する関西所属の若手イケメン棋士。王座の経験があり、終盤の正確さに定評がある。
本局は一手損角換わりの出だしから先手は早繰り銀に。後手は四間飛車から、7二金型右玉に繰り替える展開となった。
というわけで、棋譜は名人戦棋譜速報(有料)、もしくは棋譜はスマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」で観戦できるのでそちらでどうぞ。
※本局の局面図は名人戦実行委員会から許諾を頂いています。主催:毎日新聞社・朝日新聞社・日本将棋連盟
7二金型右玉を継承する糸谷八段
序盤は糸谷八段の得意戦法、一手損角換わりの出だし。対する先手は、一手損を咎める早繰り銀。プロ棋戦ではこの展開になりやすい。
先手は8八銀、6八玉型へ。これが7二金型右玉への決定的と言ってもよい対策で、後手が普通に7二金型右玉に組んでしまうと早繰り銀に対応できない。ただし、先手が最善手のみを指し続けるという条件なので、アマレベルなら問題ないかもしれない。詳しくは以下のエントリで。
一手損角換わり右玉 vs 8八銀・6八玉型早繰り銀 右玉にするのは厳しい?
一手損角換わり7二金型右玉に対して早繰り銀で攻めるのは常套手段だが、8八銀・6八玉型で攻めてくる作戦はかなりやっかいだ。
というわけで、糸谷八段はすぐに7二金型右玉にするのではなく、飛車を4筋に展開する。最近の糸谷八段が愛用する指し方で、相当研究があると思う。ぜひ、棋書にしてもらいたいものだ。
先手はじっくり堅める指し方を選んだため、後手も42手目にして7二金型右玉に組むことができた。
先手、▲5六角打を放ち猛攻へ
43手目、先手は長考の末、右玉崩しの▲5六角打。2筋と7筋の桂頭を狙っているが、すぐに▲7五歩は△8三金から受けることができる。というわけで、先手は2・3筋から攻める。
後手は52手目、△3六歩打から馬を作りに行ったが、結果的にはそれが敗着になったかもしれない。アマレベルではまだまだの戦いだが、A級レベルだと見逃してくれないようだ。
先手は飛車も切って猛攻を放つ。糸谷八段もさすがに豪腕で迫るが、斎藤八段の攻めが正確で、先手の勝利となった。
糸谷八段の感想は以下の通り。
実際、序盤は互角だと思われる。7二金型右玉にも十分可能性が残っていることを十分に証明してくれたといえるだろう。
というわけで、右玉NOWは今後も糸谷哲郎八段を応援します!