2020年9月28日に行われた王座戦一次予選で、後手番の佐々木大地五段が一手損角換わり7二金型右玉(羽生流右玉)を採用してくれたので紹介したい。
佐々木大地五段は、近年の活躍が顕著な若手強豪棋士。居飛車党で右玉の採用が多く、右玉党注目の棋士でもある(佐々木大地の右玉カテゴリ参照)。7二金型右玉の採用は恐らくはじめてだが、羽生九段相手に戦った経験はある。恐らく相当な研究が入っているだろう。

対する先手は片上大輔七段。東大卒の棋士として有名で、棋風はオールラウンダーだが、最近は振り飛車が中心。NHK杯ではプロ棋戦としては珍しく詰みまで指したことがある。
棋譜はスマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」で観戦できるのでそちらでどうぞ。
第69期王座戦一次「ロ」ブロック予選1回戦
主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟
後手番一手損換わり7二金型右玉 vs 早繰り銀
佐々木五段の作戦は後手番一手損換わり7二金型右玉。いわゆる羽生流右玉ともいえる作戦。
2019年に羽生九段が連採して連勝した作戦だが、「8八銀・6八玉型早繰り銀が強敵であるためか、出現数は減っている。

本譜は速攻にはならず、後手は7二金型右玉に組むことに成功した。もし、先手が8八銀・6八玉型で対抗した場合は四間飛車にしていたかもしれない。
△6九角から優勢に
中盤、後手はやや手待ち模様。後手番なので千日手でも問題ない。
お互いに右桂を跳ね、先手の飛車が▲2四飛としたタイミングで、△6九角打。
この手が好手で形勢は後手有利に。
佐々木五段、素晴らしい終盤の切れ味
後手の持駒:桂 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v金v玉v金 ・ ・ ・|二 | ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・ 馬 飛v歩|四 | ・ ・ ・v桂 ・ 銀 ・ ・ ・|五 | 歩v飛 歩 銀 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ 玉 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・v角 ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 歩五 手数=66 △8六飛(81) まで
本譜のハイライトは、後手が桂馬を食いちぎったあとに△8六飛の強襲!
後手の持駒:桂 歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v金v玉v金 ・ ・ ・|二 | ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・ ・|三 |v歩 ・v歩v歩v歩 ・ 馬 飛v歩|四 | ・ ・ ・v桂 ・ 銀 ・ ・ ・|五 |v金 ・ 歩 銀 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | 玉 銀 ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・v馬 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:飛 歩五 手数=72 △9六金(85) まで
▲同玉、△7八角成、▲8七銀、△8五金打、▲9七玉、△9六金! が好手。
後手の持駒:桂 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・ ・v金v玉v金 ・ ・ ・|二 | ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・ ・ ・|三 | ・ 銀v歩v歩v歩 ・ 馬 飛v歩|四 |v歩v歩 ・v桂 ・ 銀 ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 銀 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | 玉 ・ ・ 金 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・v馬 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:飛 金 歩六 手数=78 △8五歩打 まで
少し進んで上記の局面になり、寄せ形になってしまった。恐るべき終盤の切れ味。
以降、片上七段も罠を張りまくって迫るが、逃げ切り。佐々木五段の勝利となった。
佐々木五段が一手損換わりからの7二金型右玉にしたということは相当な研究があるはず。今後の採用にも期待したい。
というわけで、右玉NOWは今後も佐々木大地五段を応援します!

