2020年11月27日に行われたヒューリック杯白玲戦・順位決定リーグ戦にて、山田久美女流四段が先手右玉を採用してくれたので紹介したい。
ヒューリック杯白玲戦とは
その前に、ヒューリック杯白玲戦について簡単に解説しておきたい。
ヒューリック杯白玲戦とは、不動産会社のヒューリックがスポンサーになった女流棋士版順位戦である。勝者は女流タイトルである「白玲(はくれい)」となり、序列順位は1位へ。優勝賞金は女流棋戦最高額となる1,500万円である。
女流棋士にとって最重要棋戦がいきなり登場したといってよいだろう。
白玲戦は順位戦でいうところのA級からC2級に相当するA級からD級まで4つのリーグによって争われるが、今期は第一期のため順位決定リーグ戦として8つのリーグに分かれて戦い、成績によってA~D級まで振り分けられる。白玲1名、A級10名、B級10名、C級20名、残りはD級という割合のようだ。
昇級・降級は順位戦同様、1年に1回のため、今期D級になってしまうと、白玲に挑戦するため最低3年はかかってしまう。
一方で、女流棋士が白玲を筆頭にA級からD級までランクつけされるという事実は、周囲の目も変わってくるだろうし、厳しいものにもなるだろう。
というわけで、今期の順位決定リーグ戦は非常に重要なのだ。
将棋ブロガーとしては、公式サイトを作って棋譜も公開してほしいところ。現状は、日本将棋連盟モバイルでピックアップされた対局のみ棋譜が見られるようだ。
可能であれば、棋譜利用のガイドラインも作成してほしい。
対局者の紹介
先手の山田久美女流四段は1982年プロ入りのベテラン。タイトル獲得はないが、2度の挑戦経験がある。11月の大成建設杯清麗戦予選でも先手右玉を採用しており、右玉の経験値は高いのだろう。
対する後手は加藤桃子女流三段。25歳ながら、タイトル戦登場15回、獲得8期という堂々たる実績を持つトップ女流棋士。カトモモの愛称で人気だ。
この2人は2018年の対局でも山田女流が右玉を採用している。そのときの対局は、直前に発売された将棋世界の付録「次の一手問題集 地下鉄飛車で右玉退治(七段北島忠雄)」と進行が同じになり、一部右玉ファンの間で話題となった。
本局の紹介
棋譜観戦について
棋譜はスマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」で観戦できるのでそちらでどうぞ。
角交換なし先手右玉 vs 斜め棒銀
序盤は先手が角交換を拒否し、後手は積極的な斜め棒銀。先手はうまくいなしつつ、2筋から継ぎ歩で反撃。
さらに、後手は2枚の銀を攻めに繰り出すという超攻撃的な布陣となる。
右玉優勢だったが……
50手目後手は左銀をぶつけてくる。まるで嬉野流のような積極さだ。しかし、この局面はソフト評価値が1000を超える先手優勢。ここで角は諦めがしっかり受ける▲7六歩だったら優勢を維持できたかもしれない。
74手目の局面は▲同桂成なら互角以上を維持できた可能性がある。この手を逃してからは後手寄りに。
加藤女流三段、正確な攻め
後手有利になってからの加藤女流三段の攻めは正確。角2枚で圧力をかけ、右玉は広さを活かそうとはするが、挟撃体制に。最後は角捨ての好手も飛び出し、後手勝利となった。
まとめ
以上、右玉側の負けとなっていてが、後手はやや無理攻めだったかもしれず、右玉優勢の局面もあった。山田女流四段には今後も右玉の採用を期待したい。
というわけで、右玉NOWは今後も山田久美女流四段を応援します!