2020年11月27日に行われた王座戦一次予選で、後手番の及川拓馬六段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
及川拓馬六段は居飛車党の中堅棋士。2018年には26勝7敗という高い勝率を達成している実力者だ。対右玉の崩し方も紹介している「令和版囲いの破り方」の著者でもある。

対する先手は石井健太郎六段。若手強豪棋士で、居飛車党ながら四間飛車を稀に採用する棋風。角換わり右玉の後手番で渡辺棋王(当時)に快勝した一局は右玉党なら並べてみるべき。

棋譜はスマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」で観戦できるのでそちらでどうぞ。
第69期王座戦一次予選
主催:日本経済新聞社、日本将棋連
相矢倉模様から後手は右玉へ
序盤は相矢倉模様だが、後手は左銀を繰り出して右玉へ。現代将棋は自由である。先手も従来は6三にいる金が6一金にいるという変わった格好だ。
先手の強襲が成立するかどうか
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉 ・v金 ・v金v角 ・|二 | ・ ・v桂v銀v銀v歩 ・v歩 ・|三 |v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 ・v歩 ・ 銀 ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 角 歩|六 | ・ 歩 銀 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:歩 後手番 手数=51 ▲4五銀(46) まで
本譜最大のポイントはこの局面。▲4五銀への進出! いかにも不安定で勝算がなければ指せないが、結果的には成立しているようだ。
後手は最強の手である△3三金で応じる。これで決戦模様に。
▲3四銀!、△同金、▲5三角成、△同金、▲2三飛成(以下図)
後手の持駒:角 銀 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・v角 ・|二 | ・ ・v桂v銀v金v歩 ・ 龍 ・|三 |v歩 ・v歩 ・v歩 ・v金 ・v歩|四 | ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 銀 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・ 金 金 ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:銀 歩三 後手番 手数=57 ▲2三飛成(28) まで
角損ながら飛車先を突破。後手の陣形はバラバラ。
ソフト評価値は先手有利。
先手押し切るが、投了図からも難解?
後手は2度の犠打で攻めを遅らせるが、先手有利の状況は崩せず。石井六段もしっかり寄せ切り、先手勝利となった。
投了図
後手の持駒:金 香 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v飛 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一 | ・ ・v玉v金 ・v銀 龍 ・ ・|二 | ・ ・v桂 ・ 銀v歩v馬 ・ ・|三 |v歩 ・v歩 銀v歩 ・ ・ ・v歩|四 | ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・|七 | ・ ・ ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八 | ・ 桂 玉 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 金二 歩三 後手番 手数=81 ▲5三銀打 まで
後手投了図。ソフト評価値は先手勝勢。
……が、△6三金とされてから先手が勝ち切るのは意外と難しい。腕に覚えがあれば、ソフト相手に是非試してみてほしい(局面図上にマウスカーソルをあわせ、右上の⇔ボタンを押して中身をコピーすれば、ShogiGUIに局面図を貼り付けれる)。大逆転将棋で採用してほしい局面だ。
というわけで、本譜は右玉負けとはなってしまったが、右玉NOWは今後も及川拓馬六段を応援します!