2021年8月15日、電竜戦公式チャンネルオープン記念対局「電竜戦長時間マッチ水匠 vs dlshogi」が開催されました。
詳細は公式サイトと右玉NOWの紹介エントリを見てください。
かんたんに説明すると、将棋AI水匠とdlshogiが持ち時間90分+一手15秒追加の長時間対局を先後を持って2局行うというもの。解説に、将棋AIに詳しい阿部健治郎七段と先日のAbemaTVトーナメントで大活躍だった佐々木勇気七段、ゲストに渡辺明名人という豪華ラインナップによる企画です。
対局の模様はYouTubeで中継されました。
このエントリにはネタバレ(?)があるので、未見の方は以下をどうぞ
棋譜は公式サイトの中継ページからどうぞ。
第1局は波乱の結果に
電竜戦長時間マッチ 1回表☗dlshogi-☖水匠
第1局はdlshogiの先手。持ち時間は90分+一手15秒追加。
矢倉模様から相中住まいになるが、水匠に「成れない飛車を成る」という非合法手の読み筋が発生してしまい、序盤から大差に。探索部の不具合とのこと。
△8三飛成という謎の読み筋を披露する水匠(YouTube中継より)。
自分の環境でも試してみましたが、再現できませんでした。
読み筋通りに図面を作るとこんな感じになります(笑)
追記・このバグの詳細については、やねうら王さんがエントリを書いているので、詳しく知りたい方は以下からどうぞ。
先日の電竜戦、長時間マッチで現れたやねうら王のバグについて
というわけで、第1局はdlshogiの勝利となりました。
第2局は角換わり
電竜戦長時間マッチ 1回裏☗水匠-☖dlshogi
第2局は水匠が先手。持ち時間は90分から60分に変更。戦型は角換わりに。
dlshogiが早繰り銀で8筋を突破した局面。自分が先手を持っていたら、やってもうたと思って投了してしまうかもしれない。が、水匠の読み筋はわずかに先手寄りの互角。
完全に裸にされるが、これでも耐えているらしい……。
途中、お互いに妙手連発。ぜひ並べてみてほしい。最終的には水匠勝ち。これで、互いに先手で勝利したということに。
急遽追加された第3局で右玉が!
電竜戦長時間マッチ 2回表☗dlshogi-☖水匠
第1局が不具合による決着となってしまい、急遽追加された第3局。YouTubeでは阿部健治郎七段が引き続き解説をしてくれることに。
本局も角換わりとなった。
動画版もぜひどうぞ。
水匠、セカステ右玉に変化し千日手を読む
水匠は5三銀・6三金型のいわゆるセカステ右玉! 一時期はプロ棋戦でもよく出現した形。
水匠の読み筋は千日手。後手番なので十分ということだろう。
dlshogiが千日手を打開し好手連発
dlshogiが▲4五歩で仕掛ける。
△5五角打の切り返しがあるので、微妙に見えたが……。
水匠が桂得を果たすも、dlshogiは先手良しの読み筋。水匠はここでも千日手の読み。
次の一手が好手だった。
堂々と▲7五歩!
△3九銀▲4九飛△3八馬に、▲5九金! 。これが水匠の見えていなかった(?)好手。
▲5六角で馬を消され、形勢は先手寄りに。
次の一手のようなdlshogiの軽手
局面は水匠が8筋の継ぎ歩をしてきたところ。
次の手は、次の一手に出てきそうな好手だった。
▲7二歩!
この手で後手は痺れた。
△同玉は▲7四歩△同金▲5二銀が厳しい(以下、変化図)
変化図
△5一桂なら▲3九飛で銀を回収。
△5四角は▲5五歩。
△6三角が最善のようだが、▲8三角! という強手がある。
変化図
△同玉は▲6三銀だし、△同飛は▲4二飛成! で攻めが継続する。
というわけで、本譜は無視して7二歩を無視して△8六歩と取り込んだが……
当然ながら▲8二歩の叩きが厳しい。△同飛は王手飛車取りがあるのでこの歩は取れない。
dlshogi、快調な攻め
少し進んだ局面。素人目にはそれほど差がなく、先手からの攻め筋が見えにくいが、dlshogiの手順は素晴らしい。
▲7一歩成!
△同玉だったら、▲8一歩成も入れて、△同玉△8三銀と上から抑える。
本譜は△同龍だったが、4筋が空いたので▲4三角。
△5二角▲同角成で玉を危険地帯に呼んで、▲3七飛を飛車を攻めに参加させた。
dlshogi二度目の▲7二歩
少し進んだ局面。ここでも▲7二歩が好手。退路封鎖の一手だ。
△同金に▲7一角。△同龍以外は馬を素抜けるので、△同龍しかない。
さらに少し進み、次の一手も素晴らしい。かなり細い攻めだが繋げてしまう。
▲2二香!
振りほどくのは見た目よりも困難。放置すれば▲2一香成が詰めろ。
△3二玉は▲2一香成△同玉に▲4四桂が厳しい。馬を動かすことで、龍か飛車が働いてきそうだ。
本譜は△4三歩で懐を広げつつ▲4四桂の筋を消したが、▲2一香成△3二玉▲1一成香と補充していく。
先手玉に危険なところはなく、先手勝勢。
以下、150手目以降は水平線効果。
183手目で詰め上げてdlshogiの勝利となった。
右玉側の負けにはなったが、素晴らしい一局でした。
電竜戦長時間マッチ水匠 vs dlshogiの感想
従来型とディープラーニング勢の戦いはともに先手勝ちという結果に。
dlshogiの作者山岡さん曰く、テスト対局では先手dlshogiでdlshogiの全勝、後手dlshogiで互角ということだったので、もしかしたらdlshogiの方が1枚上なのかもしれませんが、その後の検証を待ちたいと思います。
個人的に興味深い局面も多く、面白いイベントでした。解説の棋士の方々も素晴らしかった。
カツ丼将棋さんをはじめ主催者の皆様、水匠作者のたややんさん、dlshogi作者の山岡忠夫さん、その他ソフト開発関係者の皆様、進行の真澤千星さん、シークレットゲスト(?)の竹部女流もおつかれさまです。
次回は平手の電竜戦ということなので楽しみにしたいと思います。
右玉NOWは今後も電竜戦を応援します!
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