2019年6月15日は、モバイル中継された対局のうち、3局が右玉という右玉党にとっては歴史的な日になった。
これで、人類は右玉を指す人間とそうでない人間の2種類に大別できるといっても過言ではないだろう。
今回は3局の右玉のうち、YAMADA女流チャレンジ杯で中澤沙耶女流初段が指した右玉を紹介したい。
中澤沙耶女流初段は、前年のYAMADA女流チャレンジ杯の優勝者。モバイル中継によると、右玉が得意とのこと。
対するのは堀彩乃女流2級。LPSA所属。女子アマ王位の優勝経験がある。
YAMADA女流チャレンジ杯は、女流二段以下の女流棋士とアマチュア選抜1名が参加できる若手向けの棋戦で、持ち時間は20分、切れたら30秒の早指し戦だ。
棋譜は以下からどうぞ
2019年6月15日 YAMADA女流チャレンジ杯 中澤沙耶女流初段 – 堀彩乃女流2級
先手、セカステ右玉から攻める
先手の中澤女流はストレートに右玉へ。
個人的には3三銀を見てから右玉にすることが多いが、それほど問題ないのかもしれない。
クラシックなセカステ右玉へ組み換え。
先日、阿部健治郎七段も採用していた形。
阿部健治郎七段が珍しい先手セカステ右玉を採用!
2019年6月11日に行われた王将戦一次予選 阿部健治郎七段 vs 西尾明七段戦で、先手の阿部七段が右玉を採用してくれた。 阿部健治郎七段といえば、序盤研究家として有名で、三浦九段との共著もある。 1月の竜王戦では、羽生九段に対して後手右玉...
さらに左銀も繰り出してく。先手番だけあって、右玉ではあるが攻撃的な作戦だ。
右玉、と金を作って優勢に
右玉の仕掛けは桂頭を狙う7五歩。
ここで後手が6五歩としてきた場合は、5五銀左と天王山で銀をぶつけ、同銀、同銀、7五歩、6四銀で先手有利(以下変化図)。
変化図
本譜は、7五歩に対して、同歩、同銀、6五桂と跳ねて、7四歩打(上図)。
この局面は先手の作戦勝ちと言えそうだ。ソフト評価は400ちょい先手プラス。
右玉を指していると6五桂の筋は怖いことが多いが、セカステ右玉ならほとんど驚異ではない。
後手の3五歩に対して、7三歩成、8一飛、7四角打と飛車をいじめつつ、角も設置して先手がはっきり優勢に。
端攻めを手抜いて攻める
少し進んだ局面。後手からの端攻めを手抜いて、2四歩が好手。
端攻めも右玉に対して有効だが、この局面は左辺が広いので、脅威が緩和されている。
後手からは8四角打。
5七角成と6二のと金を狙った攻防手。しかし、6五銀と桂馬を食いちぎって先手の優位は崩れない。
歩の手筋で堅陣を崩壊させる
後手がと金を外した局面。ここから歩の手筋で敵陣を一気に崩壊させる。
2二歩打、同玉、2三歩打、同金、2五歩打、5四歩、2四歩、同銀、3四桂打(下図)。
流れるような攻めが決まった。
寄せも決まって右玉快勝!
最終盤。7四角の王手に6三歩打の犠打で角を呼び込み5二銀打とした局面。
自陣も次に5七角成があって怖いが、ここで寄せの好手がある。
3一銀打!
この手が詰めろ。6三銀と馬を外したら、4二銀成、同玉、4三金打で詰む。
本譜は5七角成、3八玉を入れてから、3二歩打としたが……。
7手詰みがある。
4二銀成、同玉、5三馬!
ここで後手は投了。
同銀は、4三金打、4一玉、3二金右まで。
以上、早指しながら悪手らしい悪手もなく、中澤女流初段の快勝となった。
これで中澤女流初段は同日に行われる準々決勝に進むことになり、そこでも右玉を披露することになるが、それは次回で。
中澤沙耶女流初段、同日の連続対局で右玉を連採!(7二金型右玉)
前回までのあらすじ。 2019年6月15日、YAMADA女流チャレンジ杯で、中澤沙耶女流初段が堀彩乃女流2級を右玉で快勝する。 そして、同時に行われた準々決勝で、再び右玉を採用してくれた。 対するのは、伊奈川愛菓女流初段。 医師資格を持つ異...
というわけで、右玉NOWは今後も中澤女流初段を応援します!