2019年9月3日に行われた第5期叡王戦九段戦で、羽生善治九段が7二金型の右玉を採用してくれた。
一手損角換わり7二金型右玉は羽生九段の後手番エース戦法。これだけ採用するということは、相当な研究があるのだろう。ぜひ、棋書を出してほしいところだ。
なお、右玉NOWで解説済みの羽生九段の7二金型右玉は最後にまとめておくのでチェックしてほしい。
そんな羽生九段に対するのは屋敷伸之九段。
最年少タイトル記録を持ち、最近では「やしもん」の愛称でも人気だ。
というわけで、棋譜は以下からどうぞ
2019-09-03 第5期叡王戦 屋敷伸之九段 vs 羽生善治九段
以下から動画でも観られる
【将棋】第5期叡王戦 九段戦 羽生・屋敷・藤井
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一手損角換わり vs 早繰り銀に
羽生九段の作戦は一手損角換わり。右玉への期待が高まる。
先手は簡易的な囲いで、一手損を咎めるべく早繰り銀を見せる。
後手はやはり右玉へ。
羽生九段の7二金型右玉が再び見られることになった。
右玉党にとって歓喜の瞬間だ。
先手積極策に△5五角打の切り返し
先手は▲2四歩!
右玉側としても当然警戒しなければならない。
△同歩、▲同銀、△同銀、▲同飛のあと、後手は△5五角!
対早繰り銀の筋ではあるが、このタイミングは珍しいかもしれない。
先手は▲3七歩打。
対して右玉は△8四歩と伸ばす。
玉頭に迫る一手であるほか、将来的に▲9五角打が攻防の王手にならないことも大きそう。
先手、2三角打を決断する
先手は▲2三角打!
2筋を強引にこじ開ける手で、対右玉ではよく見かける。
ここで△3三角と引いて飛車に当てるのが好手。
▲2八飛、△2三金、▲2三飛成。
単に△2三金としたときと違い、角の位置が違う。
ここで△1四角打が用意の切り返し。龍で王手をかけることができない。
この△1四角打は対早繰り銀でよく出てくる筋だ。
流行中! 早繰り銀に対する右玉の対策
早繰り銀が流行中である。 速攻で銀を繰り出され、角切りからあっという間に龍を作られて敗勢になってしまった、という人も多いだろう。 具体的にはこんな局面だ。 後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------...
ソフトが読んでいた猛攻
▲2八龍に△4七角成として、▲5八金と馬に当てた局面。
ここでソフトは思い切った手を読んでいた。
変化図1
△5八馬!
いきなりの角切り。
ソフトの読み筋は、▲5八金、△8五桂、▲8六銀打、△7七桂成、▲同銀、△7五歩、▲6六歩、△7六歩、▲同銀、△7七歩打、▲同桂、△7五歩打、▲6七銀、△7六銀打(以下変化図2)
変化図2
この局面はやや右玉よりの互角だ。はっきり優勢というわけではないが、成立はしているだろう。
本譜は△2七歩打、▲同龍をいれたあとに△1四馬。
この局面は互角だが、わずかに先手がよさそうだ。
先手、一瞬の逆転
▲3四銀打は好手。3三の角がいなければ待望の▲2二龍が入る。
後手は△7七角成!
同玉に△7九銀打!
後手としてもギリギリの攻めだ。
▲2二龍、△3二歩打、▲7八玉に△8八銀打とつなぐ。
この局面は先手有利ではっきり逆転したといってよいだろう。
感想戦でも出ていたが、ここで▲6九金! という手があるようだ。
変化図
△5八馬が怖すぎるがこれで耐えているらしい。先手がうまく指せば、後手の攻めは切れそう。
本譜は馬切りを防ぐ▲4七歩打。自然に見えて緩手だったようだ。
右玉、切り札の桂跳ね
少し進み、▲4三銀成に対して、△6五桂!
この手は7三の逃げ道を作りつつ、攻めにも使える一石二鳥の手で、右玉党にとっては気持ちが良いい瞬間だ。
飛車を取って後手はっきり優勢に
対する先手は▲3五角打。
攻防に利いているが、結果的にこの手が敗着になったようだ。
変えて▲6六歩と桂を外しに行ったほうがよかったかもしれない。
△4六歩打、▲5三成銀、△7三玉に▲2五銀打。
△4七歩成、▲同金に△1二金打!
先手陣は飛車打ちに弱い。
この金は最終的に寄せにも活躍してくれる。恐るべき羽生九段。
▲1四銀に△2二金で龍を取り、後手がはっきり優勢に。
先手、油断のならない2枚角
先手は▲3六角打。この手に期待を込める。
油断のならない手で、トン死筋が多くある。
後手はしっかりと△5四歩打。大事な一手だ。
▲6三成銀、△同金に▲5二銀打。後手にも攻めが刺さってきた。
ここで後手は△8八飛打!
△2八飛打の方が好防に利いているように見えるが、この手は好手。
先手は▲5九玉。ギリギリの受けだ。
△5八銀打、▲4八玉に△5五桂打!
変えて△4七銀成とかしてしまうと上部が開いていて逆転してしまう。
先手は▲6三銀成。普通に見えるが恐ろしい一手。
取ると▲5四角から詰んでしまう!
というわけで、△8三玉と交わす。これで詰みはないが、銀を与えると詰んでしまうので寄せには注意が必要だ。
羽生九段、秒読みでも正確に寄せる
▲3八玉の早逃げに対して、△4七銀歩成の開き王手。
▲2七玉、△3八飛成、▲2六玉に△1四歩! この手が詰めろ。
▲6二角成としたが形作りか。先手玉には詰みがある。
△3六銀成、▲同歩に△2五銀打!
この銀捨てが好手。
▲同玉に△3三桂。ここで先手の屋敷九段は投了した。
以下、▲3四玉は△2五角打から、▲3五玉は△4五金打から詰む。
最後に2二金が利いている。
というわけで、一時は先手有利の場面もあったが右玉の逆転勝ち。羽生九段の一手損角換わり7二金型右玉の強さが際立っており、今後も出現することだろう。
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