2020年2月23日に行われた竜王戦1組ランキング戦2回戦にて、後手番の稲葉陽八段が右玉を採用してくれたので紹介したい。
稲葉陽八段は関西所属の強豪棋士。タイトル経験こそないが、銀河戦優勝、NHK杯準優勝、名人戦挑戦などの高い実績がある。居飛車党で右玉の採用も多く、先日の王位戦挑戦者決定リーグでも右玉を採用して勝利したばかり。
対する先手は佐藤天彦九段。名人3期を誇るトップ棋士で、稲葉八段とは同世代(ともに1988年生まれたが佐藤九段が早生まれなので学年は上)。愛称は「貴族」だ。
本局は手損のない角換わりから後手番の稲葉陽八段が右玉を採用。
先手▲4七角打に対して、右玉側がすべての金銀を玉側に寄せる最強右玉的な展開となった。
棋譜は、スマホアプリ「日本将棋連盟モバイル」からどうぞ。
後手右玉 vs 地下鉄飛車を含みにする6七金型
序盤は手損のない角換わりから後手がストレートに右玉へ。
プロの右玉といえば、駆け引きの末右玉にした、という展開が多いが、最近はストレートな右玉が増えている。
先手は▲6七金として、▲8八銀からの地下鉄飛車で9筋を狙う作戦を見せる。右玉側としては警戒が必要だ。本譜はそのような展開にはならなかったが。
▲4六角打に対して金銀を固める
49手目、先手は▲4六角打と角を手放す。こちらも対右玉でよくある手筋だ。対する右玉は△3三桂のあとに、△4三金左と、2筋を放棄するかのごとく金銀を固める。
54手目の局面は、先手が簡単に2筋を突破できるように見えるが、これが右玉の罠。
▲2四歩、△同歩に、▲同角は、△2一飛! ▲同飛は、△1三角!
という手があるのだ。
54手目の時点では右玉作戦勝ちといってもよいだろう。
先手に幻の守備の妙手
局面は進んで102手目。9五銀ではなく、8四歩打で飛車を支えた局面。本譜の2一飛成は当然の一手に見えるが、ソフトはすごい手を読んでいた。
▲7八玉!
角をタダで取らせる代わりに自陣を安全にして後手の飛車を狭くするという一手。それでもわずかに後手が良さそうだがぜひ見たかった。
以降は完全に後手ペースとなった。
先手、驚異的な粘りも……
124手目、△7五歩。▲同歩や▲同角を考える局面だが、▲同歩は△8六飛から必至の筋があり、▲同角は、△同飛とされて▲同歩から飛車を取ると詰んでしまう。
佐藤九段は▲7九香打! さすがという粘り。△4五銀の銀の押し売りも▲5五金と交わす。しかし、稲葉八段の寄せも正確無比で、最後は3手詰めの局面まで指して先手投了となった。
以上、稲葉陽八段の快勝と言ってよいだろう。▲4六角打に対しては本譜のように指し回せばだいぶ右玉が良いように思える。今後は角換わり右玉で▲4六角打が減るかも知れない。
というわけで、右玉NOWは今後も稲葉陽八段を応援します!
※最強右玉については以下を参照してほしい